主文
1 原判決を次のとおり変更する。
第1審判決を次のとおり変更する。
(1) 上告人は,被上告人に対し,平成23年6月1日限り30万円及びうち23万6614円に対する同月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 被上告人のその余の請求を棄却する。
2 訴訟の総費用は,これを4分し,その3を上告人の負担とし,その余を被上告人の負担とする。
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過払い金(かばらいきん)とは文字通り払いすぎた金銭をいうが、特に、利息制限法の定める利率を超える高利の借入れをした借主が、本来、借入金の返済は終わったのに返済を続けたため払いすぎた金銭のこと。
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本人訴訟の場合、貸金業者側の反撃に遭い、後記の民法704条に基づく利息を付さない和解に追い込まれるケースが多いといわれ、また、後掲のように、取引履歴の不開示があったり、充当関係で複雑な事案であったりすると、本人訴訟で法律上正しい金額の返還を受けることは極めて困難なのが現実。
理由
上告代理人高井章光ほかの上告受理申立て理由について
1 本件は,被上告人が,貸金業者であるAを再生債務者とする民事再生手続における再生計画認可の決定が確定した後に同社の権利義務を承継した上告人に対し,BとAとの間の継続的な金銭消費貸借取引において発生した過払い金に係る不当利得返還請求権が再生計画の定めにより変更されたとして,変更後の債権(以下「本件債権」という。)の元本である30万円及びこれに対する訴状送達の日の翌日である平成21年5月26日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
上告人は,本件債権について,再生計画において猶予期間が定められているから,その弁済期は到来しておらず,被上告人において,その支払を求めることはできないなどと主張して争っている。
2 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
(1) Bは,Aとの間で,平成9年7月9日から平成13年5月1日までの間,第1審判決別紙「利息制限法に基づく法定金利計算書」記載のとおり,継続的に金銭の借入れとその弁済が繰り返される金銭消費貸借取引(以下「本件取引」という。)を行った。
(2) Bは,平成18年3月1日,死亡した。その後,Bの相続人全員が相続を放棄し,平成20年11月18日,Cが被上告人の相続財産管理人に選任された。
(3) Aは,平成19年9月14日,東京地方裁判所に再生手続開始の申立てをした。同裁判所は,同月21日,再生手続開始の決定(以下「本件再生手続開始決定」という。)をし,平成20年8月20日,再生計画認可の決定をした(以下,この決定を「本件再生計画認可決定」といい,これにより認可された再生計画を「本件再生計画」という。)。本件再生計画認可決定は,同年9月17日,確定した。
(4) 本件再生計画は,届出のない再生債権である過払い金返還請求権(その利息,損害金等の請求権を含む。以下同じ。)について,請求があれば再生債権の確定を行った上で,届出があった再生債権と同じ条件で弁済する旨を定めるとともに,要旨次のとおり,権利の変更の一般的基準を定める。
ア確定した再生債権(本件再生手続開始決定の日以降の利息,損害金を除く。以下同じ。)の40%相当額を弁済し,その余につき免除を受ける。
ただし,確定した再生債権の額が30万円以下である場合はその全額を,30万円を超える場合は40%相当額と30万円の多い方の額を弁済する。
イ届出のない再生債権である過払い金返還請求権については,その債権者により請求がされ,再生債権が確定した時(訴訟等の手続がされている場合には,その手続によって債権が確定する。),上記アのとおり権利の変更を受け,その時から3か月以内に,上記アに定める額を弁済する。
(5) 本件取引に係る各弁済金のうち利息制限法(平成18年法律第115号による改正前のもの)1条1項所定の制限を超えて利息として支払われた部分を元本に充当すると,本件再生手続開始決定の日の前日である平成19年9月20日までに過払い金23万6614円,民法704条所定の利息7万6538円が発生し,その合計は31万3152円であった(以下,上記過払い金及び利息の支払請求権を「本件再生債権」という。)。
本件再生債権について,再生債権の届出はない。
(6) 上告人は,平成20年10月1日,Aとの間で,同社の事業を上告人が承継する旨の吸収分割契約を締結して,Aが本件取引に関して有する一切の権利義務を承継した。
3 原審は,上記事実関係の下において,本件再生計画によれば,本件再生債権は,訴訟等の手続がされている場合には,判決の確定等によってはじめて確定するのであって,本件再生債権の確定を前提とする本件再生計画の定めによる権利の変更はいまだ生じていないから,弁済期の未到来をいう上告人の主張は失当であるし,被上告人において過払い金元本を超える部分に対する遅延損害金を請求することもできないと判断して,被上告人の請求を全部認容した第1審判決を変更し,これを30万円及びうち23万6614円に対する平成21年5月26日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で認容すべきものとした。
4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
(1) 民事再生法178条本文は,再生計画認可の決定が確定したときは,再生計画の定め又は同法の規定によって認められた権利を除き,再生債務者は,すべての再生債権について,その責任を免れると規定する。
そして,同法179条1項は,再生計画認可の決定が確定したときは,届出債権者等の権利は,再生計画の定めに従い,変更されると規定し,同法181条1項は,再生計画認可の決定が確定したときは,再生債権者がその責めに帰することができない事由により届出をすることができなかった再生債権(同項1号)等は,再生計画による権利の変更の一般的基準(同法156条)に従い,変更されると規定する。
(2) 前記事実関係によれば,本件再生計画は,届出のない再生債権である過払い金返還請求権について,請求があれば再生債権の確定を行った上で,届出があった再生債権と同じ条件で弁済する旨を定めるが,これは,過払い金返還請求権については,届出のない再生債権についても一律に民事再生法181条1項1号所定の再生債権として扱う趣旨と解され,上記過払い金返還請求権は,本件再生計画認可決定が確定することにより,本件再生計画による権利の変更の一般的基準に従い変更され,その再生債権者は,訴訟等において過払い金返還請求権を有していたこと及びその額が確定されることを条件に,上記のとおり変更されたところに従って,その支払を受けられるものというべきである。
(3) 以上によれば,本件再生債権は,本件再生計画認可決定が確定することにより,本件再生計画による権利の変更の一般的基準に従い変更されており,被上告人は,訴訟等において本件再生債権を有していたこと及びその額が確定されることを条件に,その元利金31万3152円のうち30万円について,本件再生債権が確定された日の3か月後に支払を求めることができる本件債権を有するにとどまるものというべきであり,その弁済期は,本件訴訟の口頭弁論終結時にはいまだ到来していないことが明らかである。
5 したがって,前記事実関係の下において,弁済期未到来をいう上告人の主張を排斥して,被上告人の請求を一部認容すべきものとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。
論旨はこの趣旨をいうものとして理由がある。
そして,本件の事案の性質,その審理の経過等に鑑みると,被上告人の請求は,審理の結果,本件債権の弁済期が到来していないと判断されるときは,その弁済期が到来した時点での給付を求める趣旨を含むものと解するのが合理的であり,また,本件においては,あらかじめその請求をする必要があると認められる。
以上説示したところによれば,被上告人の請求は,上告人に対し,本判決確定の日の3か月後の日である平成23年6月1日限り本件債権の元本である30万円及びこれに対するその翌日である同月2日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容すべきところ,被上告人から上告がない本件において,原判決を上告人に不利益に変更することは許されないから,原判決を主文のとおり変更するにとどめることとする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
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